〜論文解説
§1 はじめに
スキーは、落下によりターンするのでしょうか?内主導のターンは、カービングターンに適しているのでしょうか?
本解説(第1回)におきましては落下によりターンする、いわゆる水平面理の基となったと思われる以下の論文について、できるだけ平易な言葉で解説するものです。もし、より詳しいことが知りたい場合は、以下の論文を原文のママ読むことをお勧めします。
§2 水平面理論ってなに?
横軸方向への落下がスキーターン(滑走ではありません)を引き起こすものであるとするものです。
詳しくは、TOPページリンク及び日本スキー教程を参照して下さい。
§3 基となった論文を読んでみましょう
水平面理論によれば、山回りから谷回りに反転する瞬間、スキーは水平面に対して水平となり、これは、実験により確かめられているとされています。また、この実験は論文として取りまとめられ、応用物理学会誌に掲載されています。
Japanese Journal of Applied Physics(http://www.ipap.jp/jjap/index.htm)
−掲載論文一覧−
●Experimental Study of the Mechanism of Skiing turns.
 T. An Uphill Turn from Straight Running Downhill
 Japanese Journal of Applied Physics
 Vol.26,No.7,July,1987,pp.1185-1189
●Experimental Study of the Mechanism of Skiing turns.
 U. Measuremente of Edging Angles
 Japanese Journal of Applied Physics
 Vol.29,No.6,June,1990,pp.1203-1208
●Method for Drawing Locus of a Sliding Ski as Observed
 from Direction Perpendicular to Snow Surface
 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.34(1995)pp.674-679
 Part1,No.2A,February 1995
●Experimental Study of the Mechanism of Skiing turns.
 V. Measuremente of Edging Angles of Skis on Snow Surface
 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)pp.2377-2382
 Part1,No.4A,April 1996
●Coefficient of Kinetic Friction of Snow Skis during Turning Descents
 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.720-727
 Part1,No.2,February 1998
 ©1998 Publication Board,Japanese Journal of Applied Physics

こちらのページからも論文がご覧いただけます。
論文情報ナビゲータ:CiNii(サイニイ)http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/CiNiiTop#

さて、論文と聞いただけで、凄い理論じゃないのか?とか、学会誌に掲載されたと言うことはいい加減なものじゃないはず、と思ってしまいがちですが、気後れせずに一度目を通してみようじゃありませんか。

スキー教程も含め、よく模型実験の画像や動画が紹介されています。この実験でも、模型スキーが使われています。
この模型スキーはどうやってターンするのでしょうか?みなさん、スキーでターンをする時はスキーを傾けますね。この模型スキーでは、模型スキー上に取り付けられた円盤の上に載せるウエイト(マグネット)を中心軸よりオフセットして貼りつけることで、傾きを出すようにしています。

でも・・・この模型スキーがターンをしたとき、そのターンを支配するのが何か分からないのです。水平面を境としてターンの向きが変わったとしても、それは、スキー自身が向きを変えたがったのでしょうか?それともウエイトの影響?それともオフセットの影響?何が支配的だったのでしょうか?これでは、分かりません。

一体、この実験から何が導き出せるのでしょうか?“この実験条件においてはこのような挙動を示した”、それ以上何も分からないはずです。

次に、この実験では、砂の斜面上で模型スキーを滑走させ、その軌跡やスキーの角度などを計測しています。

実験でスキーの斜面に対する角度としているのは、実はトラックの角度です。スキーの角度とトラックの角度は一致するとは限りません。となると、水平面より谷側に角付けが始まったから谷回りが始まったのか、谷回りが始まる直前のトラックが水平だったのか、これでは分かりません。
更に、下の図を見てみましょう。

Locusとあるのが軌跡です。β0が模型スキーと水平面との角度です。βが模型スキーと斜面の角度です。よく見てみると、谷回りに入ってからしばらくの間、模型スキーは山側にエッジを立てたままターンを続けています。いわゆる、サイドスリップの一種(先落し)です。

この実験から分かったことはなんでしょうか?

この実験条件において滑走した模型スキーがサイドスリップを始めたときのトラックの角度を計測したら水平面を境としていたものがあった、と言うことです。

ちょっと想像してみましょう。もし、模型スキーの上に載せた錘がもう少し重かったら、水平面より山側に角付けした状態でもサイドスリップを起こしターンの方向が変わったかもしれません。この実験結果が普遍的に起こりうる現象であるかどうかについてこの論文では考察されていませんし、そうはならないことはちょっと考えただけでも分かります。

つまり、水平面に対する角付けによりターン方向が変わる、これを普遍的に捉え理論化とする、この論文はそこまで網羅できるものではないのです。

水平面理論は、特定の実験条件でたまたま起こったに過ぎない現象であり、雪上に適用することはできないということがお分かりいただけたでしょうか。

〜Amazonカスタマーレビューより〜
筆者は、各所で水平面理論は権威ある学会誌(J.J. of A.P. 応用物理学会欧文誌)によってオーサライズされたと称しているが、実際に応用物理学会誌に受理されたのは限られた条件下での実験結果についてのみである。実験は砂の上で行われており、それを雪の上のスキーに適用するための考察はなんらなされていない。
また、本書中に述べられている「横への落下」は応用物理学会誌に投稿された論文には記載されておらず、学会によって検証されたと称するのは間違いである(嘘であると言ってもよい)。